セミナーレポート / Seminar Report

2025年度 第1回オープン・サイエンスセミナー「AI for science を考える」

2026年2月9日、東北大学片平キャンパスおよびオンライン配信にて、2025年度第1回オープン・サイエンスセミナー「AI for scienceを考える」が開催されました。本セミナーは、内閣府が策定する「第7期科学技術・イノベーション基本計画」(2026〜2030年度)に掲げられる「AI for science」という新しい概念を受け、その具体像や研究現場での関わり方を探る目的で企画されました。
 ■ 開会のあいさつ: 塩入 論 /研究促進・支援機構リサーチ・マネジメントセンター センター長
 ■ セミナー1.「イノベーション多産な国とするための人とAIとの共生社会実現に向けて」
         栗原 聡 先生 /慶應義塾大学理工学部 教授、人工知能学会 会長、JSTさきがけ社会変革基盤・領域統括              
 ■ セミナー2.「生成AI構築 / 原理解明の研究者からみた AI for Science」 
         鈴木 潤 先生 /東北大学 言語AI研究センター センター長 教授
 ■ 閉会のあいさつ: 荘司 弘樹 研究促進・支援機構リサーチマネジメントセンター副センター長

Seminar 1. イノベーション多産な国とするための人とAIとの共生社会実現にむけて

栗原 聡 氏 (慶應義塾大学理工学部 教授、人口知能学会 会長、JSTさきがけ社会変革基盤・領域統括)              

栗原先生からは、科学的発見におけるAIの重要性と、人間が今後どのようにAIと向き合うべきかについてお話しいただきました。

  • AIによる科学的変革: 2024年のノーベル賞が示す通り、AIはもはや科学の進歩に不可欠です。専門家が1年かけていたタンパク質の構造予測を数分で完了させるなど、圧倒的な計算能力がイノベーションの前提条件となっています。
  • 効率化」から「共生」へのシフト: AIを単なる事務効率化のツールとして使うのではなく、新たな価値を生むための「壁打ち相手」や「想像力のサポート」として活用すべきです。
  • 「思いやり」のあるAIとのパートナーシップ: 単なる利便性の追求だけでなく、時には人間の長期的利益を考えて助言や拒否ができるような、「信頼関係(コンパッション)」に基づいたパートナーシップが理想的な姿として提示されました。

講演2:生成AI構築/原理解明の研究者からみた AI for Science

鈴木 潤 氏 (東北大学 データ駆動科学・人口知能センター 教授、言語AI研究センター センター長 )

鈴木先生からは、生成AIの技術的本質から見た科学研究の加速と、そのリスクについて専門的な知見を共有いただきました。

  • 研究サイクルの劇的な短縮:「仮説立案→実験→解析→論文執筆」という従来1〜2年を要していた研究サイクルを、AIの活用により数ヶ月(理想的には2ヶ月程度)完結させる新たな研究ビジョンが示されました。
  • AIの特性の理解: AIは膨大な知識の要約や網羅的な組み合わせ探索において圧倒的な能力を発揮しますが、「0から1」を生み出す独創的なパラダイムシフトは依然として人間が主導する必要があります。
  • 研究者が留意すべき:「ハルシネーション」 AIが「存在しない参考文献」を偽情報を生成するリスク(ハルシネーション)があるため、論文投稿時等の徹底した実在確認は、研究者としての信頼を守るために不可欠です。

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